BARおくすり店長日記

BARおくすりの店長が日常思ったことを書きます。

「南極料理人」という絶品映画について

 

ひさしぶりにすばらしい映画を見た。こんなにすばらしいと思ったのは「アナと雪の女王」以来だ、というとそんなにひさしぶりでもないけれど、たまさかに「極寒」つながりの「南極料理人」はアナ雪に負けず劣らずおもしろかった。

感情を歌に込めるような劇的なシーンや視覚的に派手なシーンは南極料理人にはないけれど、日々の暮らしの中にある豊かさが、南極という極端に特別な環境で浮かび上がってくる。オフビートともいえる笑いが随所に散りばめられていて、それを結実させる役者陣の息のあった掛け合いも絶妙。

とくに、きたろう。このキャスティングは本当にすばらしくて、おでんに大根入れる決断をした人と同等かそれ以上。あと、個人的には主人公の妻役の西田尚美。もともと西田尚美が好きだったこともあって、男ばかりのこの映画において彼女の紅一点の活躍がうれしいところ。

話の内容としては、特別な環境で、特別じゃないいつものことのすばらしさを謳うという、言ってみればありきたりな流れではあるけれど、その謳い方が独特で興味を引く。謳い上げるというのでもなく、どちらかというと淡々と進む。それでもなぜかじーんと感動させられるというのは映画のなかでも特別な部類に属すると思う。

飯がおいしいときの感動というのはすぐ忘れられるものだけど、そういう感動の積み重ねで・・・、というのはあんまり説教臭すぎる。でもそういうこと。

そういうことがうまく映画の形になっている。堺雅人がつくる表情の説得力がすごい。言葉で言うとみっともなくなることを画で見せられると途端に嬉しくなるってことが、いい映画を見てるとよくあると思うけど、南極料理人に関しては全編通してそれを体現している。

あと、僕に言わせれば、ある人があるものを食べるシーンなんかは圧巻。ネタバレに配慮した言い方だとどうしてもこうなるんだけど、映画を見た人にはこれだけでどのシーンか見当がつくんじゃないかと、半ば本気で思ったり。

さいごに、アナ雪との比較を無理やりしてみると、寒さの感じ方がちがうと思った。むこうは寒くなさそうで、こっちは寒そう。両方とも寒そうなシーンは寒そうではあるんだけど、アナ雪は寒そうなシーン以外は寒くなさそうで、南極料理人は絶え間なく寒さが感じられる。

感覚に特化したというか、感覚を丁寧になぞろうとしている結果だと思う。いい邦画のいいところ(繊細さ)が出てる。だから料理の映し方以前のところですでにして料理がおいしそう。よく「ものは器で食わせる」なんて言うけど、「ものは演出で食わせる」でも通るんじゃないか。その上で撮り方もバツグンにおいしそうなもんだから、もう始末におえない。

文句なく「星みっつ!」です。

 

 

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