「アナと雪の女王」を見た
これは傑作。
いつものように良かったところをくだくだしく書き立ててもいいんだけど、最近なんとなくそういう文章を書く気持ちになれない。だからよかった、傑作だった、とだけ書いておく。
ダメだ。
文章を書くために気分を盛り上げようとして劇中歌の「Let It Go」の動画を見ると、もう何かを書くどころじゃない。ただただ見入ってしまう。見終わったら見終わったで気分が盛り上がりすぎて、1億ぐらいあるこの映画のいいところをいちいち箇条書きするのも違うか、とか思ってとりあえずリピート再生。
というのを昨日から何度も繰り返し、やっとそのことをここに書けました。めでたし。
雪の女王が覚醒して髪を下ろす場面、映画館で見た時にはあまりの美しさにたじろいで思わず目を伏せてしまった。ものすごく尊いものは直視できないっていうのは迷信だと思っていたけど考えを改めないといけない。
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この映画は間違いなくファンタジーですけど、「今の時代にファンタジーは作れない」なんてやっぱり嘘だったんだと思いました。
アニメーションは子供のためのものだという力強いメッセージを感じた。
わくわくする場面、おかしくて笑える場面、登場人物の気持ちに立ってともに悲しむ場面、そういう感情の動きをアニメーションならではの連動した動きで盛り上げる。目線の動き、表情の動き、手足の動き、背景(カメラ)の動き、そして音楽、歌。
もう単純にめちゃくちゃ快感。
そしてそれとはべつの層ではこのお話がファンタジーだということをきちんと伝えている。だから大人も安心して楽しめる。大人というのは「これは嘘だよ」と言われないと話を楽しめない子供のこと。
では、どういうやり方でファンタジーが自らのファンタジーに自己言及しているかというと、例えば山男のクリストフ。
クリストフはトロールの「完璧じゃない」の歌でアナと観客に紹介される通り、完璧な人間ではなく、欠点を持っているということになっている。しかし映画上ではその欠点は描かれない。というのはその欠点が「におい」だから。視覚と聴覚に対して最高度に洗練されたこの映画でも嗅覚に働きかけることはできない。そのことが「表現されていないところ、見えないところに欠点はありますよ」という但し書きになっている。
ほかにも、アナの破天荒ぶりは下手くそな王女様気取りと合わさってものすごく魅力的なんだけど、窮地をしのぐためロープ付きツルハシをクリストフに向かって投げるシーンで、アナが投げた刃はクリストフのすぐ頭上の地面に刺さっていたりする。結果的にそれでクリストフは助かるわけだけど、アナの世間知らずぶりの魅力をさりげなく危うさと抱き合わせていて、その微妙なバランスの取り方がよくできている。何がいいって言い訳じみていない。でもしっかり弁解の役目を果たしている。
ハンス王子に毛布を配らせたり「人を傷つけてはいけない」と言わせているのもいい。
部分部分でファンタジーにとってのカルマが溜まっていくのは作品の誠実さの故なんだけど、そのカルマを解消しているのが雪だるまのオラフ。
オラフはその存在がすばらしい。つよくない、かしこくない、役に立たない、三拍子揃っている。ただただ夢見る。しかも夢見るのは夏=破滅。めっちゃタナトス〜。姉妹は別格としてこのキャラクターに一番感心した。いろいろあるけどオラフのおかげでしっかりファンタジーになっている。
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気づけば結局いつものようにくだくだしく書き立ててる。「Let It Go」のリピート再生。エンドレス「少しも寒くないわ」。
では、プリンセスつながりということでプリンセスルーシーの動画でお別れ。バイビーー!